乳腺、発達させるとどうなるのか? その仕組みとサイズの関係

乳腺、発達させるとどうなるのか? その仕組みとサイズの関係

私たちのバストには数多くの器官が存在します。「乳腺」もまたそのうちの一つです。この乳腺は非常に重要なものであり、乳児を育てるための母乳を出す器官でもあります(ただし、「母乳が出なかったら乳児が育たない」というわけではありません。現在は人工乳も出ているからです)。

この乳腺の発達の過程と、発達させるとどうなるかについて解説していきます。

乳腺の発達過程と年齢~年代別の乳腺のあり方

「乳腺」は乳児に母乳を与えるために用いられる器官のうちの一つです。乳腺は乳首に繋がり、そこで開口することになります。乳腺は管のようなものですが、これは小さな「腺細胞」と呼ばれるものの集まりでもあります。腺細胞が10~100個ほど集まってできた器官(「小葉」と呼ばれます)が、さらに20~40個ほど集まって「乳管」が形成されています。腺細胞は袋のようになっているものであり、これによって作られた母乳が乳管を通って乳児に供給されます。

「乳児に供給されるために使われている器官」ということもあり、乳腺はある程度成長してからつくられる器官のように思う人もいるかもしれません。しかし実は乳腺組織自体は、まだ自分自身が胎児であるころからつくられています。ただこれは成長期になって初めて発達し始めます。10歳~12歳程度をひとつの基準として、その後15歳になるくらいまで発達していくことになります。
そして妊娠~出産を経て完全に乳腺が発達しきります。

この「乳腺」は、女性ホルモンの影響を受けます。特に関わりの深い女性ホルモンは「エストラジオール」と「エストリオール」です。この2つは「女性ホルモン・エストロゲン」に分類されますが、実は少し働きが違うものです。
エストラジオールは、私たちの体が成長していく過程のなかで分泌されるものです。乳腺を発達させることに深い関わりがあるものであり、これの分泌によって女性の体は丸みを帯びていきます。「バストサイズアップ」においてはよく「エストロゲンの分泌量やバランスを考えることが大事だ」とされますが、このときに取り上げられる「エストロゲン」は(特記がない限りは)この「エストラジオール」を指します。ただし、「乳腺の発達」と「バストサイズアップ」が厳密には異なるものです。

「エストリオール」は、上でも述べた「妊娠~出産」に関わるエストロゲンです。作用自体は弱いのですが、妊娠中に非常に多くなるエストロゲンです。胎児が健康に育っているかどうかを判断するための基準ともなります。

この2つのほかにも「エストロン」と呼ばれるエストロゲンがあります。エストロゲンは閉経を迎えると分泌量が少なくなりますが、その代わりとでもいうようにエストロンがよく分泌されるようになります。エストロンもエストラジオールも、「分泌量が良ければよい」というものではなく、多すぎると乳がんを悪化させる原因になったり乳がんを発生させる原因になったりすると言われています。しかし、「エストリオール」はこの3つのなかで唯一、乳がんを抑える効果を持っているとされています。

乳がんと乳腺の関係について

乳腺の発達自体は、乳児を育てるためであったり、また魅力的なバストを作ることに寄与したりと、さまざまなプラス効果を私たちにもたらすものです。そのため、「乳腺を発達させるためにはどうしたらよいのか」などのようなキーワードで答えを探す人もいます(なお、残念ながら、「このようなことをしたら、乳腺は確実に大きくなる」という方法を断言することは難しいと考えられます。豊胸手術の一部を施すことによって乳腺を成長させることはできるとされていますが、この方法を取り入れている美容クリニックはごく一部です)。

ただ、「乳腺」という言葉は、「乳がん」と切っても切り離せない関係にあることを覚えておかなければなりません。

「乳がん」、この言葉は多くの人が一度は耳にしたことのあるものでしょう。女性によく見られるがんであり、子宮がんと並んでよく取り上げられるものです。なお、男性でも乳がんに罹患(りかん)する可能性は0ではありませんが、その数は非常に少ないとされています。社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院のデータ(2006年1月1日~2012年12月31日まで)では、「65人の女性患者に対して、男性1人の割合であった」となっています。

乳がんは、乳腺や腺組織から発生します。単純に「乳がん」と呼ぶ場合は、乳管に生じるものを呼ぶことが多いでしょう。乳がんのうちの90パーセント近くが乳管に生じるからです。小葉部分にも発生する可能性はありますが、これは5パーセント~10パーセント程度と非常に少ない割合です。なお、小葉に生じる乳がんを、特に「小葉がん」とすることもあります。

乳がんは乳腺によく見られるものであり、成長していくものです。乳腺が発達段階にある若年層の場合はこの乳がんが見つけにくいともいわれています。乳がんの検査方法の一つとして「マンモグラフィ検査」がよく取り上げられますが、これだと若年層の場合はがんになっていたとしても感知しにくいのです。エコーによるものは胸が発達した若年層でも発見しやすいとされていますが、良性のしこりでも発見してしまうというデメリットもあります。この2つ以外にもMRIやPETと呼ばれる検査方法がありますが、この方法は実施しているところが少ないといった問題があります。

乳がんは非常に罹患率の高いがんです。女性の場合2人に1人が生涯で1度以上のがんに罹患するといわれていますが、乳がんはそのなかでももっとも高い罹患率を誇ります。11人に1人は乳がんを患うとされており、非常に身近な病気です。

ただ、乳がんは極端に恐れる必要のない病気でもあります。なぜなら、乳がんの場合、生存率が極めて高いからです。最初期に見つけられた場合は5年生存率が100パーセント、ステージ1の場合は99パーセント、ステージ2の場合は95パーセント、ステージ3の場合で85パーセント、ステージ4にまで進んだ場合であっても56パーセントと、非常に高い生存率を誇るのです。死亡率が高いとされている肺がんなどは、ステージ2の段階での5年生存率が50.1パーセント、ステージ3では22.4パーセント、ステージ4では4.8パーセントとなっていますから、その違いはあきらかです。

社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院「乳癌の生存率に関するデータ」Link

特定機能病院福井大学医学部付属病院「乳がんの最新治療」
Link

国立がん研究センターがん情報サービス「肺がん」
Link

乳がんのなりやすさに「胸の大きさ」は関係あるのか?

「乳腺に乳がんができる」ということから、「胸が大きいと乳がんになりやすいのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかしこの考え方は誤りだと考える向きもあります。

しばしば勘違いされることですが、実は「乳腺」がバストに占める割合は決して多くはありません。バストの90パーセント程度が脂肪でできており、乳腺が占める割合は10パーセント程度しかないのです。胸のサイズを決定づけている要因の多くを「脂肪」が占めるため、「乳腺」にできる乳がんとの因果関係はないと考えられています。

もっとも、「肥満体型の人は乳がんになりやすい」「閉経後の肥満は乳がんのリスクとなる」とする説もあるので、ある程度コントロールしていく意識を持っておいた方がよいかもしれません。

ちなみに、乳がんの発生にはエストロゲンも関係してきます。このため、初潮が早かった人(11歳以下)や閉経が遅かった人(55歳以上)は乳がんになりやすいといわれています。それだけエストロゲンの分泌機関が長かったからです。また、前述したように、妊娠中に出される「エストリオール」については乳がんの発生を抑制する効果があるため、妊娠~出産経験があり、かつ初産の年齢が29歳以下の人は乳がんになりにくいとされていえます。

KONICA MINOLTAピンクリボン運動「乳がんってどんな病気?」
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ワコール ワコールピンクリボン運動「乳がんの権威「福田先生」に聞いてきました。~乳がんの基礎知識編~」
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バストアップのためだけに乳腺を発達させる、という考え方の危険性について

「バストサイズアップ」を調べるとき、私たちはつい「乳腺=大きければ大きいほど、バストサイズアップができるもの」と考えてしまいがちです。しかし乳腺は美しい胸を作るものであるのと同時に、乳児に栄養を与える器官であり、また乳がんという病気を宿しやすい部位でもあることを忘れてはいけません。

バストサイズアップを目指そうとする場合、女性ホルモンであるエストロゲン(エストラジオール)に似た構造体の食品(プエラリア=ミリフィカや大豆イソフラボンなど)をとる人もいるでしょう。しかし、女性ホルモンは「増やせば増やすほどよい」というものではありません。上でも挙げたように、乳がんなどのリスク要因となりうるからです。
もちろん、一般的な量を食べている分には大きな問題は生じにくいだろうと思われます。しかし、「早く効果が欲しいから非常に多くの量をとる」「エストリオール錠を飲んでいるが、病院でなんらかの治療を受ける際に、これを飲んでいることを言わない」などの行為は、健康被害をもたらしかねないものです。

サプリメントや薬などをとるときは用法容量を守らなければなりませんし、なんらかの治療が必要になった場合は当然それを医師に告げ、診断に従わなければなりません。

バストアップを目的とする場合は、乳腺ではなくほかの部位にアプローチする方法もたくさんあります。ブラジャーを変えたり、脂肪をつけたり、胸筋をつけたりなどです。安易な気持ちで、「エストロゲンを増やせば乳腺も育つ=乳腺が育てばバストサイズアップが可能である」と考えるのは危険です。