乳腺の発達とホルモンの関係について

乳腺の発達とホルモンの関係について

私たちの胸は、さまざまな組織からできています。そのなかでも、「乳腺」は非常に大切な役割を持つものです。

今回はこの「乳腺」に注目して、「そもそも乳腺とはどのようなものか」「乳腺の発達はどんなときに起きるのか」「乳腺の発達において、ホルモンはどのような影響を与えるか、そして乳腺とバストサイズの関係について取り上げていきます。

乳腺とはどのようなものか

まず、「乳腺とは何か」について解説していきましょう。

乳腺とは、乳房に存在する組織のことをいいます。これは私たちの乳房の中に存在する腺であり、大切な役割を担っています。
子どもを育てるために、昔から「母乳」が使われてきました。この「母乳」を作り出すものが乳腺なのです。乳腺から分泌される母乳は、単純に乳児の栄養補給減として使われるだけでなく、彼らにさまざまな免疫機能を与えることにも役立っています。

乳腺自体は、非常に早い段階から作られます。私たちがこの世に生を受ける前、まだ胎児の段階でも、すでに乳腺の存在が確認できます。乳腺の組織は、胎児の1か月~1か月半くらいのあたりから作られ始めます。「乳児に母乳を与える」という役割のある乳腺が、まだ自分自身がこの世に生まれる前から作られるというのは、なかなか面白い話だといえます。

このようにして発達していく乳腺は、成長するにしたがって、子どもの頃とは違うかたちをとっていきます。
成長した乳腺は、腺細胞と乳管細胞と繋がって存在します。

腺細胞は乳汁(後述します)を作り出すための器官であり、ここで作られた乳汁は、この腺細胞が集まってできる「乳管」を通して分泌されることになります。最終的に乳汁は乳首~乳頭から分泌されます。乳児が母親の胸に吸い付くのは、このような理由があります。

腺細胞は複数個存在します。そしてこの腺細胞がたくさん集まって、腺細胞は嚢状(のうじょう。袋のようなかたちのこと)になって腺房を形作ります。1つの腺房は10~100個程度も集まっています。

さらにこの腺房がまとまって小葉となり、1つの乳管を作ります。乳管1本は、小葉が20~40個程度集まって作り上げられたものです。つまり、乳管細胞1本は、200~4000個の腺房によって形作られているともいえます。してこの乳管細胞は、枝分かれする木のようななかたちで存在します。

乳首部分で口を開いている乳管の数は、15~20個程度だといわれています。この乳管は、さまざまな組織に覆われています。胸部の大部分は脂肪によって構成されていますが、その「脂肪」もまた、乳管の周りを覆っている組織のうちの一つです。

乳腺の構成を紹介していった最後に、上記で取り上げた「乳汁」について解説していきましょう。乳汁は「ちしる」と読むものですが、「にゅうじゅう」「ちち」と呼ばれることもあるものです。国語的には「母乳」とほぼ同じ意味で使われていますが、「乳汁」とする場合はヒトを含む動物全般のものを指し、「母乳」という場合は人間の女性から出る乳の分泌液を指す場合が多いとされています。ちなみに、母乳には多くの栄養やウイルス感染をブロックすることに役立つ成分が含まれています。現在は優れた人工乳が数多く出ていますが、この点で、人工乳は母乳の有用性を上回ることができないと言われています。

乳汁は単純に子どもに栄養を与えるだけではなく、さまざまな免疫上昇効果をもたらすものでもあるからです。また、乳汁を与えることによって、子どもとのコミュニケーションができると考えられています。

ただ、母乳の出る・出ないは個人差があるものではありますし、母乳が出ない=子どもとのコミュニケーションが取れない、あるいは母乳が出ない=子どもが健康に育たないということではありません。また、母乳の出る・出ないが、その親子関係を決定づけるものでもありません。

乳腺の発達とホルモンの関係に関して

乳腺は、胎児のころからすでに存在します。前述したように、1か月~1か月半のころには、すでに乳腺がつくり始められているのです。
しかし、乳腺の発達が見られるのは、10歳~12歳程度からだと考えられています。

だれもが意識する「成長期」あたりに、乳腺は大きく成長し始めます。この頃に月経を迎える子も多く(「月経が迎えるころに乳腺も成長し始める」と言い換えることもできますが)、月経を機に、女の子の体は徐々に女性らしい体、子どもを育てることのできる体へと変化していきます。

さて、この「乳腺の発達」ですが、実は乳腺は一生涯に渡って成長し続けるものではありません。成長ホルモンの分泌とともに成長していく「乳腺」は、成長ホルモンや女性ホルモンの分泌量が少なくなっていけばまたそのかたちを変化させます。具体的にいえば、閉経後(平均年齢は50.5歳。ただし個人差があり、40代で閉経を迎える人もいれば60歳近くまで続く人もいる)は乳腺は徐々に変わっていくということになります。この場合、乳腺の組織は、脂肪へと変化します。乳腺はバスト形成に大きな影響を与えている組織でもありますが、閉経後でも「乳腺がなくなった分だけそのまましぼむ」「閉経したら、まったく胸がなくなる」ということはなく、脂肪として残り続けることになります。

オムロン「閉経はどのような状態のことで、だいたい何歳くらいに迎えるものなのでしょうか。」Link

年代別、乳腺の発達とホルモンの関係についての詳細

上では、「乳腺とはそもそもどのようなものか」「乳腺の発達と、乳腺が変わるのはいつのタイミングか」について述べてきました。ここからはより詳細に、年代別に、乳腺の発達とホルモンの関係について見ていきましょう。

成長期

胎児時代から存在する乳腺が、徐々に大きくなっていく期間のことをいいます。10歳~12歳くらいで乳腺が発達していく人が多いとされていますがこれには個人差がありますが、専門医によっては「9歳くらいからではないか」と考える人もいます。加えて人によってはもう少し乳腺の発達時期が遅い可能性もあります。乳腺の発達もまた、初潮と同じように、個人差が大きいものだといえます。そのため、「あまりにも成長が遅い」「ほかの異常も見て取れる」「体調不良などを伴っている」などの特段の考えるべき事情がない限りは、それほど気にする必要もないでしょう。

~15歳程度まで

これは「バストサイズ」とも大きく関わってくるところですからご存知の人も多いかと思われますが、バストの成長は15歳くらいである程度落ち着いてきます(もちろん個人差はあるため、高校生をすぎても成長する人もいます)。だいたいこれくらいの年齢のときのバストサイズが、その人の一生のバストサイズを決めるとされています。

ただ、このときには実は乳腺の発達自体は十分にはなされていません。バストサイズがある程度決まってくる時期であっても、乳腺はまだ発達を続けている段階なのです。
成長した乳腺が木の枝のように枝分かれをすることはすでに述べた通りですが、これくらいの年齢のときにはまだ十分には枝分かれしていません。また、腺房の発達も不十分です。

妊娠期

乳腺や腺房が完全に完成するためには、「妊娠」を経なければならないとされています。このときに、HCG(ヒト繊毛性腺刺激ホルモンのこと。妊娠するとこの値が大きく上がる。このHCGは、妊娠をしているかどうかを判断する「妊娠検査薬」の検査値としても利用されている。尿の中にHCGが含まれているので、妊娠検査薬の所定部位に尿をかけると、尿中のHCG量を検査薬が感知し、妊娠しているかどうかを判定するという仕組み)の濃度が上がり、これによって女性ホルモンであるエストロゲン(正確に記するならば、「エストオール」。妊婦のエストロゲン)の値が高くなります。

エストロゲンは、多くの人が知っている「バストを育てる働きのある女性ホルモン」です。このエストロゲンによって乳腺がさらに発達します。そして、乳児を育てるために必要な乳汁などを作り出す器官へと変わっていくのです。

30歳程度~40歳代くらいまで

データによって多少の違いはありますが、女性ホルモンであるエストロゲン(より正確に言うのであれば、「エストラジオール」。性成熟期に出されるホルモンであり、女の子の体を女性らしくしていく作用を示す)は30歳前後でピークを迎えます。この時期を過ぎると、女性ホルモンの分泌量は徐々に低下していきます。

女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が徐々に減っていくなかで、乳がんにかかるリスクが高くなっていきます。
体から分泌されるエストロゲンの量が少なくなるため、「少しでもエストロゲンを受け止めよう」としてエストロゲンを受け取るための器官が増えています。乳がん細胞のなかにある「エストロゲンを受け止めるための器官」にエストロゲンが入り込むことによって、乳がん細胞が生み出されるようになるわけです。

現在はエストロゲンをよくつくる食生活に変化していっています。このため、「エストロゲンが減ったことで受容体ががんばる、その結果として乳がんになるのであれば、エストロゲンが増えた現在では乳がんは起こらないのではないか」と考えてしまいがちです。しかし、実際には異なり、「がんを引き起こす刺激によってダメージを受けた細胞が、分泌量の多くなったエストロゲンの影響で増えて、がんになる危険性」も指摘されています。

乳腺について語られるとき、この「がんとの関係」はよく取りざたされます。

閉経後

閉経を迎えると、乳腺はその役割を終えたと判断し、徐々に脂肪へと変わっていきます。
ちなみに閉経を迎えても、女性ホルモンは作られ続けます。ただそのときに作られる女性ホルモンは、成長期にみられた「エストラジオール」や妊娠中にみられた「エストリオール」ではなく、「エストロン」と呼ばれるものです。

このような流れを経て、「乳腺」は変化していきます。