乳腺の発達と痛み~痛みを少なくするためにはどのような方法があるのか?

乳腺の発達と痛み~痛みを少なくするためにはどのような方法があるのか?

「乳腺」は、女性の体にも男性の体にも存在するものです。胎児期から生じるものであり、子どもに母乳を供給するための器官でもあります。この「乳腺」はしばしば痛みを持つこともあります。

今回は、「乳腺とは何か」「乳腺の発達と痛みの関係性」、そして「乳腺の痛みを少なくする方法」についてとりあげていきます。

乳腺とはどんなものか

「乳腺の痛み」について知るためには、まずは「乳腺とは何か」について知らなければなりません。乳腺の仕組みは、乳腺の痛みとも深い関わりがあるからです。

乳腺とは、バストの内部に存在する器官のことをいいます。バストを構成する要素のうちの90パーセントは脂肪ですが、残りの10パーセントはこの「乳腺」です。

乳腺は、乳管と腺細胞と呼ばれるものによって成り立っています。腺細胞は袋のようなかたちをしていて、ここで乳汁(ちしる。一般的には、ヒトを含む動物の母乳という意味で使われる。特に人間のものを指し示すときは「母乳」という言い方が使われることが多い。これ以降は「母乳」とする)を作り出しています。
腺細胞が集まって「小葉」ができるのですが、この小葉がまたまとまって「乳管」を作り出しています。

乳管は乳首に繋がり、そこから母乳を分泌します。乳管を通って出される母乳には高い栄養素と免疫力向上の効果があり、乳児の育成において非常に重要な役割を果たします。ただ、現在は優秀な人工乳も出ています。

このような成り立ちと、また役目を持っている乳腺は、その特性上、女性の性特徴を持つ人(これ以降は、特段の理由がない限り「女性」とする)のバスト内でよく発達します。前述したように男性にも乳腺は存在しますが、男性の場合は女性のそれとは異なり、それほど発達しません。乳児期や思春期、あるいは50代以降にふくらむこともありますが、これはホルモンバランスの乱れなどによるものです。そしてこれらは、多くの場合自然におさまるか、数回のホルモン剤の投与で収まります。(もっとも、遺伝的女性化乳房症と呼ばれるものもあるため、すべてのケースで自然治癒するわけではありません)。

また、「子ども(乳児)を育てる」という働きがあるため、この乳腺は初潮のあたりくらいから成長していくことになります。初潮の1年ほど前から徐々にバストの状態が変わり始め、初潮後3年程度を目途に大人の乳房に近いかたちにまで成長します。初潮年齢を考えると、10歳~12歳くらいで乳腺が発達し始め、15歳程度で落ち着くとされています。

さらに、妊娠~出産を行うことで、乳腺は完全なかたちへと変化します。なお、乳腺は「子どもを育てるための器官」ですから、役割が終わった後は徐々に脂肪へと変化していきます。つまり、閉経後の乳腺は脂肪へと変わっていくのです。閉経年齢は平均で50歳ということですから、このあたりが契機となりそうです。

もっとも、これはあくまで一つの目安にすぎません。
体の状態というのは、個々人で大きく異なるものです。初潮が始まるのが遅い子もいますし、逆に早い子もいます。また、40代で閉経を迎える人もいれば、60歳近くまで生理が見られる人もいます。また、妊娠~出産に関しても、経験する人もいれば経験しない人もいます。加えて、妊娠~出産をした人の間でも、「何歳のときに行ったか」が異なります。
このようなこともあり、乳腺の発達に関しては一概に「これが正解」とできる数字はありません。ただ、一つの目安と考えることはできます。特に「乳腺が発達し始める段階」については、「12歳くらいになってもまったく胸の成長が見られないようであれば、病気の可能性なども否定しきれない」としている医師もいます。異常があったり、またあまりにも変化がなさすぎたりするようならば、病院に行くのがよいでしょう。

乳腺の痛みについて~その1・乳房痛

女性のバストの中で成長していく「乳腺」ですが、この乳腺はときに痛みなどを伴うこともあります。その原因はさまざまですが、ここではよく見られる症状や代表的な症状を取り上げていきましょう。

まず、「乳房痛」と呼ばれるものです。これは、乳房に感じる痛みを指す言葉です。これ自体は、実は一度も感じない人の方が少ないといわれています。女性のうちの7割がこの症状を患ったことがあるといわれており、非常にメジャーな症状です。

この症状は、主に生理前に生じることが多いといわれています。生理1週間ほど前に症状が見られることが多く、胸のハリなどを感じる人もいます。人によっては、この痛みやハリが出てくることで、「そろそろ生理になりそうだ」と分かります。
成長期に乳腺を発達させるために使われる女性ホルモン(エストロゲン)は、この乳房痛にも関わっています。私たちの体には、エストロゲンとプロゲステロンと呼ばれる2種類の女性ホルモンがあり、お互いにバランスをとりあっています。ただこのホルモンバランスは一定ではなく、変動しています。ホルモンバランスの変動は、時に女性の体に変化をもたらします。乳房痛やハリもそのうちのひとつです。

この乳房痛は、

  • 特段ひどい痛みを伴う
  • 生理前だけでなく、どの期間でも日常的に痛みがある

というような場合でないかぎりは、特に心配はいりません。その期間がすぎると落ち着くはずです。

なお、「心配はないということだが、痛みは軽減したい」と考えるのであれば、まずは下着を見直しましょう。体にフィットする下着を選べば痛みは軽減します。「自分のバストサイズくらし把握している」と思う人もいるかもしれませんが、大手の下着ブランドであるワコールが調べたところ、実に71パーセントもの人が「自分の体に合っていないブラ」をつけていたということが判明しました。乳房痛が生じている人は、ぜひサイズの測り直しをしてください。

また、カフェインの含む飲み物は避けるべきだといわれています。これは刺激物だからです。「カフェインを含む飲み物」というとだれもが「コーヒー」を思い浮かべますが、実はお茶である「玉露」は、コーヒーの2倍~2.9倍ものカフェインを持っています。また、紅茶でもコーヒーの半分、ウーロン茶や煎茶でもコーヒーの3分の1のカフェインを含んでいます。カフェインを絶対にとりたくない!ということであれば、「カフェイン0」と銘打たれたものを選んだ方が安心です。

ワコール「サイズの測り方 下着の選び方」
Link

食品安全委員会「食品中のカフェイン」
Link

乳腺の痛みについて~その2・乳腺症

「乳腺症(にゅうせんしょう)」もまた、「乳房痛」同様、非常にメジャーな病気です。乳房に痛みを感じて病院に行った際に、「乳腺症である」と診断される人は決して少なくはありません。

女性の体には女性ホルモンが存在し、そのホルモンバランスや分泌量が乳腺にさまざまな影響を与えることはすでに述べた通りです。乳腺症もまたそのような症状のうちのひとつであり、これも生理周期の影響を受ける場合があります。

乳腺症の場合は、しこりが生じることもあります。また、乳首から分泌物が見られることもあります。乳腺症自体は、痛みなどがひどくなければそれほど怖い症状ではありません。良性の病気であるため、そのまま放っておいても問題がないのです。ただ、がんとの見分け方が難しいため、しこりを感じたり痛みがあったりするのであれば早めに病院に行くことが求められます。また、放置することで、しこりが石のように硬くなる「石灰化」の様相を呈することもあります。

乳腺の痛みについて~その3・乳腺炎

「乳腺炎(にゅうせんえん)」は、「乳腺症」と名前が似ていますが違う症状です。乳腺が細菌に感染したり炎症が起きたりすることによって起こるものであり、乳房に痛みや熱をもたらす症状です。授乳期に見られることもありますが、それ以外のときに起きる場合もあります。授乳期に生じた場合、痛みが伴うことも多く、子育ての疲れや母乳が出にくくなるストレスと相まって、お母さんを苦しめることになります。また、場合によっては高熱を伴います。

乳腺炎の種類や重症度によって治療方法が異なります。簡単なバストマッサージによって改善する場合もありますが、薬が必要になることもあります。さらに、症状が極めて重い場合は手術を行わなければならないこともあります。

乳腺炎の場合は、個々人の状態を把握したうえで丁寧な治療をしていくことが求められます。

乳腺の痛みについて~その4・乳がん

乳がんは非常にメジャーな病気です。女性が罹患する確率が非常に高く、女性11人のうちの1人がこの病気を患うといわれています。ちなみに、男性でもこれが起きることはあります。

発達した乳腺にがんが生じるもので、その大半が「乳管」に発生します。
初期のころには痛みを伴いません。そのため、しこりなどの存在によって乳がんを疑うことになるでしょう。ただ、ステージが進むと痛みが出始める場合もあります。

なかには急激な悪化を招く乳がんもあります。ただ、乳がんは全般的に予後が良好であり、早い段階で見つけることができれば生存率は極めて高いといえます。
治療法はいくつかあります。まず、乳房を切り取ってしまう方法。そのなかにもさまざまな種類がありますが、がん細胞を切り取ってしまえるのがメリットです。ただ、外見上の問題から忌避する人もみられます。

放射線治療もまた、選択肢としてあがってきます。乳房を切除せずにできる治療方法ではありますが、炎症を伴う可能性もあります。

さらに、「薬によってがんを小さくしたり、QOL(qualityof life。人生の質。その人がそのひとらしく生きられるようにという考え方)を向上させたりする治療方法」も用いられます。

乳がんの場合、医師と患者で連携を取り合いながら治療方法を選んでいくことが求められます。

国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
Link