男でも乳腺はある? それが発達した場合はどうなるか

男でも乳腺はある? それが発達した場合はどうなるか

「乳腺」は、乳児に対して母乳を与えるために存在するものです。このことだけを考えれば、男(男性)には乳腺は存在しないように思われます。

ここでは、「男(男性)でも乳腺はあるのか」「男(男性)の乳腺が発達した場合はどうなるのか」について解説していきます。

男(男性)にも乳腺は存在する

栄養価が高く、また免疫力向上にも関わる母乳を生み出すための器官として「乳腺」があります。この乳腺はバストの中に存在しており、10歳~12歳くらいから徐々に発達していきます。そして妊娠~出産を経て完成し、閉経を迎えて徐々に脂肪へと変わっていきます。
(ただし、発育には個人差があります。そのため、10歳~12歳を過ぎてから発達する人もいますし、妊娠~出産を経ても母乳が出ない人もいます。これはあくまで「個人差」であり、「人体の優劣」の話ではありません)。

現在の医学では、子どもを産むことができるのは、子宮を持っていてそれが発達している人であり機能的な問題が起きていない人だけです。また、自然に胸が育つのも女性の性別の特徴を持つ人だけです。
このことを考えれば、女性の性別の特徴を持たない「男(男性)」の場合は、乳腺が存在する必要はないように思われます。

しかし実際には、男(男性)にも乳腺は存在します。乳腺の存在は胎児の段階ですでに確認できるとされていて、出産後も男(男性)の乳腺もそのまま存在し続けることになります。

もっとも、男(男性)の乳腺は通常は女性の性別の特徴を持つ人のように、第二次成長期を迎えたからといっても成長することはありません。一般的に男(男性)の胸は女性の胸のようなふくらみはもちません。

人にとってはしこりができる場合もある

ただ、男(男性)の場合でも、成長過程で乳腺にふくらみが見られる場合もあります。
代表的なのは、乳児期や思春期に見られるものです。

このとき、500円玉程度~もう少し小さい程度のふくらみがみられることがあります。これは「腫大(しゅだい)」とも呼ばれます。

このふくらみは、多くの場合ごく一時的な期間を過ぎれば収まっていきます。その期間は個人差がありますが、だいたい半年~2年以内(1年以内が目安としているケースもある)だとされています。また、このふくらみには病的な症状が見られないこともあり、基本的には放置で構わないとされています。ただ、痛みが生じる場合もありますし、別の病気が隠れている可能性もあります。そのため、一度は病院に行くべきではあります。「放置で構わない」は、「病院に行き、異常なものではないと判断された場合の対処」であって、「自己判断で『問題がない』と考えてよい」ということを指すわけではありません。

この、乳児期~思春期に見られる男児(男性)の胸のふくらみは、片方にだけ見られる場合もありますし、両方の胸に見られる場合もあります。

なお、男(男性)に限ったことではありませんが、肥満状態になると胸も大きくなります。これは、バストの90パーセントが脂肪で構成されているからです。女性の場合でも、乳腺がバストに占める割合は10パーセント程度にすぎません。男(男性)でも太ると胸に肉がつき胸が大きくなりますが、これは当然「病的なもの」「女性化によるふくらみ」とは区別されます。

男(男性)の「女性化乳房症」についてより深く見ていこう

上で挙げた「乳児期や思春期における胸のふくらみ」も含めて、「女性化乳房症(じょせいかにゅうぼうしょう)」という言葉で「男(男性)の胸のふくらみ」が語られることがあります。
ここからは、より細かくこの「女性化乳房症」について解説していきます。

「女性化乳房症」は、文字通り、男(男性)の胸がふくらむ状態を言います。しかしながら、女性化乳房症と判断された場合でも、男(男性)の胸が女性のバストと同じようなかたちになることは基本的にはありません。しこりのようなかたちで確認されることが多いと思われます。

上記で挙げた、「乳児期や思春期に見られる女性化乳房症」は、それほど深刻なものではありません。これはホルモンの働きによるものであり、徐々に収まっていくものです。このホルモンは、「女性ホルモン」も関係しています。

「男性ホルモン」「女性ホルモン」という言葉がありますが、実際には女性の中にも男性ホルモンは存在しますし、男性の中にも女性ホルモンが存在します。このホルモンバランスが崩れたり、女性ホルモンの量が多くなったり、男性ホルモンの量が少なくなったりすることによって、女性化乳房症が起きる可能性があるのです。
「思春期のころ、運動部に所属していた。筋肉をつけるために、大豆由来のプロテインを飲んでいた。女性化乳房症が起きたが、これが原因だと思われる」という症例を報告している病院もあります。大豆には女性ホルモンに似た構造体である「大豆イソフラボン」が存在するため、それが女性化乳房症をもたらしたのではないかと考えているのです。

乳児期や思春期に見られる女性化乳房症はそのうち収まることが多いのですが、ある程度年齢がいった後でも同様の症状が見られる場合もあります。成人してから起こる女性化乳房症は、50~70代くらいによくみられるとされています。割合としては3300人に1人程度ではありますが、50歳というのは女性でも「閉経」を迎える年代であり体の中のホルモンバランスに変化が見られる年齢でもあります。男性の場合は男性ホルモンの分泌量が少なくなってきて、女性ホルモンが優位に立つため女性化乳房症が起きると考えられています。
このような女性化乳房症もまた、原則として健康被害をもたらすものではありません。

女性化乳房症=無害 とも言いきれない

このように、基本的には女性化乳房症はそれほど恐れるものではありません。

ただ、この「女性化乳房症」は、単純に「体内のホルモンバランスが崩れたこと」だけを原因とするものばかりではありません。「体内のホルモンバランスが崩れた理由」に注目しなければならない場合もあるからです。

ホルモンバランスは「加齢」という無害なものでも狂うものですが、体内に異常がある場合でも狂います。
たとえば、男性ホルモンの分泌に関わる臓器に異常がある場合です。脳下垂体や肺などがその代表例です。これらの臓器に異常があった場合、男性ホルモンの分泌量などが変わってくるので、女性化乳房症が見られる場合があります。肺がんを原因として女性化乳房症が引き起こされることもあります。

加えて、糖尿病になっていたり、極端に栄養が足りていない状態になっていたりすることで女性化乳房症が引き起こされることもあります。
男性には非常に珍しいものではありますが、乳がん(後述します)によって女性化乳房症が起きる可能性もあります。

加えて、薬よって女性化乳房症の副作用がもたらされる場合もあります。高血圧用の薬や利尿剤の副作用のひとつに、女性化乳房症があります。

男性の場合でも、「乳がん」によって胸のしこりが確認できる場合もあります。乳がんの男女比率は65:1とも125:1ともいわれていますが、「女性だけに起こる病気」ではありません。ただし乳がんの場合は予後が非常によく、早い段階で見つけることができれば5年生存率は90パーセントを超えます。

このように、女性化乳房症の奥には重い病気が隠れている可能性があります。特に肺がんは非常に予後が悪い病気でもあるため、早期発見が非常に重要です。また、薬の副作用によって女性化乳房症が起きていると疑われる場合であっても、勝手に服用を中止することは非常に危険です。特に高血用の薬の場合は、服用を中止することで命までも危険にさらしてしまいかねません。

なお、「特に異常を伴うものではない」と判断された場合でも、「やはり見た目の問題で気になる」という人も多いことでしょう。この場合は、男性ホルモンを注射することで収まると考えられています。個人差はありますが、4~5回程度の注射で改善が見られるとのことです。

公益社団法人鳥取県医師会「【19)男性の健康問題】 1)成人男性の乳房肥大」
Link

社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院「乳癌の生存率2013年」
Link

GRJ「乳がん 遺伝学的概括」
Link

遺伝性女性化乳房症について

ここまでも、「男性の乳房肥大」について取り上げてきましたが、最後に「遺伝性女性化乳房症」を取り上げます。

今まで取り上げてきたのは後天的なものであり、ホルモンバランスの崩れなどによって引き起こされるものです。しかし、一時的ではなく、女性ホルモンであるエストロゲンが持続して高い値をマークすることによって女性か乳房症が見られることもあります。これは「遺伝性女性化乳房症」と呼ばれていて、何度も胸が大きくなったり、低身長で止まってしまったり、性機能が低下したりといった症状が見られます。また、女性にも遺伝性女性化乳房症が起きる場合もあり、このときには不正出血や胸が大きくなりすぎるなどの症状が見られます。

この症状に対しては、乳房を小さくする手術がとられるのが一般的でした。しかし現在は、「アロマターゼ阻害剤」というエストロゲンの合成を抑える薬が効果を示すのではないかと考えられ始めています。ちなみに、アロマターゼ阻害剤は閉経後に起こる乳がんに対して立ち向かえる薬でもあります。

遺伝性女性化乳房症にしろホルモンバランスの乱れによる後天的な女性化乳房症にしろ、「自分が患っている女性化乳房症が、放置してよいものか、それともその奥に病気や隠れているため治療を要するものか」ということは、素人判断ではわかりません。薬による副作用による女性化乳房症にも同じことがいえます。このいため、女性化乳房症がみられた場合は自分で判断せず、病院に足を運んで原因を突き止めてもらうことが重要です。