クーバー靭帯は胸を揉むことで損傷することがあるの? 垂れた胸の治し方

クーバー靭帯は胸を揉むことで損傷することがあるの? 垂れた胸の治し方

「胸の大きさ」に悩む人もいますが、「胸の下垂(垂れ下がること)」に悩む人もいます。

今回はこの「胸の下垂」に焦点をあててお話していきます。そして、この「胸の下垂」について考えるとき、キーワードとなってくるのが「クーパー靭帯」です。

クーパー靭帯とはどんなものか~胸の構造について

私たちの胸は、さまざまな要素で構成されています。

まず土台に「胸筋」があります。これは文字通り胸の筋肉であり、バスト部分を支える土台でもあります。胸筋を鍛えることによってその上にのるバストは型崩れがしにくくなりますし、胸筋の分だけ胸に厚みが出ることにもなります。腕立て伏せなどがバストアップに効果的だと言われているのは、それによって胸筋を鍛えることができるからです。

「バスト」がどこからどこまでを指す言葉かは解釈によって違いがありますが、一般的に胸筋の上にのっているのが、「バスト」「胸」と呼ばれるところです(ここでもそのような意味で使っていきます)。

バストは、90パーセントの脂肪と10パーセントの乳腺によって作られています。乳腺は乳児に母乳(乳汁)を与えるために使われている器官です。初潮を挟んだ1~3年程度の間に成熟していき、妊娠~出産~授乳を経て完成します。また、閉経を迎えると、乳腺は次第に脂肪へと変化していきます。

この「バスト」を支えるものとして「クーパー靭帯(じんたい)」があります。このクーパー靭帯はコラーゲンを主体として作られています。

上でも述べた「乳腺」は、このクーパー靭帯によって皮ふや筋肉と結びついています。クーパー靭帯は、胸のかたちを保つ働きもしており、これが切れたり伸びたりことで胸は垂れ下がっていきます。

クーパー靭帯が切れたり伸びたりする原因はどこにある?

クーパー靭帯の保持が、「美しい胸」「若々しい胸」を保つために必要だといわれている理由は、クーパー靭帯が「胸の下垂を食い止める役割」を担っているからです。

クーパー靭帯は胸を上向きの状態で保つためにも使われている靭帯ですから、これに損傷が起きると胸は地面側に向かって垂れさがることになります。こうなるとバストは非常に老けて見えることになります。胸のエイジングケアを考えるうえで、クーパー靭帯の保持に意識を向けることは非常に重要です。

クーパー靭帯が切れたり伸びたりする原因は、いくつかあります。

運動

まず、運動。

激しい運動などを行うことによって上下左右にバストが振られることになります。バストが振られるとその衝撃に耐えきれず、クーパー靭帯が切れることがあります。

このため、運動をするときは意識して、胸を支えるブラジャーを使わなければなりません。現在はスポーツするとき用に作られたスポーツブラなどがあるので、これを利用するとよいでしょう。
なお、ここでは「運動」としていますが、日常生活(たとえば、歩いたり軽く走ったりするなど)のときでも胸は動くことになります。そのため、日常的にきちんとブラジャーをつけておくことが望ましいといえます。

授乳

次に授乳。

妊娠をすると、女性の胸は大きく変化します。授乳に適したバストになるように乳腺が発達していくのです。この結果、妊娠~出産~授乳期にある女性の胸は、それまでよりも大きくなります。2カップ程度のサイズアップが起きることが多いのですが、人によっては4カップ以上サイズが大きくなることもあります。

胸が大きくなると、クーパー靭帯もバストの皮ふも当然伸びることになります。そのようにして妊娠~出産~授乳期の胸は維持されるのですが、授乳が終わるとバストサイズは出産前のサイズに戻っていきます。
しかし伸びてしまったクーパー靭帯は戻りません。この結果として、「クーパー靭帯の伸び」が起きるのです。また、皮ふも伸びたままになってしまうことがあります。

なお、妊娠~出産~授乳によるバストサイズの急激な変化と同じように、「体重の急激な変化」によってもクーパー靭帯や皮ふの伸びが起こり得ます。

運動

運動と少し関係するのですが、寝返りもまたクーパー靭帯の損傷を招くものです。

「日中はブラジャーをつけて胸の保護に努めている」という人でも、夜はブラジャーをつけないで寝ている人も多いのではないでしょうか。

しかしこれは実はかなり危険なことなのです。寝ているとき、私たちは何度も寝返りを打つことになります。この度に、胸は上下左右に振られることになります。
日中に使うブラジャーをつけて寝る……という人もいますが、これはあまりお勧めしません。日中に使うブラジャーは、「起きているときの動き」をサポートするために作られているため、横になったりうつぶせになったりしたときの胸のサポートをすることは想定していないのです。

寝るときに使うブラジャーは、それ用に作られたナイトブラを使うのが望ましいといえます。

加齢

加齢も原因のひとつです。

クーパー靭帯はコラーゲンによって作られていますが、年を重ねるとコラーゲンの生成量が衰えていきます。これについては「顔の弾力」がよく取り上げられますが、バスト部分に存在するクーパー靭帯もまた大きな影響を受けます。
加齢によってクーパー靭帯は伸びてしまうようになります。また、加齢は肌から柔軟性や弾力を奪うため、これによって「老けた印象のバスト」ができてしまいます。

加齢によるクーパー靭帯の衰えを、完全にブロックすることはできません。

どれほど気を付けている人であっても、加齢による変化自体を避けることはできません。ただし、正しいブラの利用などによって、変化を遅らせることは可能です。

サイズの合っていない下着を使っている

上でも触れたように、ブラジャー」はクーパー靭帯の断裂や伸びを防ぐ非常に有用なアイテムです。

しかし合わないブラジャー」は逆効果となりえます。

きちんとバストを保護することができないため、運動などによる衝撃がクーパー靭帯に伝わってしまうのです。

また、小さすぎるブラジャーをつけていると血行が悪くなります。血行が悪くなると胸に十分な栄養がいきわたらず、胸の成長が妨げられてしまいます。
下着のブランドであるワコールの調査によって、「71パーセントの女性が本来のサイズとは異なるブラジャーをつけており、そのうちの半数以上がサイズの小さいブラジャーを使用していた」ということが分かっています。ブラジャーのサイズを見直すことは、クーパー靭帯を守るために非常に重要です。

この5つが主な原因となり、クーパー靭帯は損傷します。ただ、「刺激が良くない」ということから、「胸を揉むこともまた、クーパー靭帯の損傷に繋がるのではないか」と考える向きもあります。

ワコール「サイズの測り方 下着の選び方」
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一度損傷してしまったクーパー靭帯は元に戻らない

一度損傷してしまったクーパー靭帯を修復することはできません。一部のエステサロンにおいては、「光を当てることによってクーパー靭帯を修復することができる」と謳っていますが、これについては信ぴょう性が薄いと考えた方がよいでしょう。エステサロンで使われている機械というのは、クリニックで使われているものよりもずっと弱い威力しか持ちません。仮にエステサロンの機械でクーパー靭帯を修復できるのであれば、当然クリニックでも同じような施術を行うことが可能だからです。しかし現在、クリニックのなかで、「クーパー靭帯を完全に修復できる」としているところは見られず、多くのクリニックが「クーパー靭帯は一度切れてしまうと修復はできない」としています。

「クーパー靭帯はコラーゲンからできている。それならばコラーゲンを摂取すればクーパー靭帯も復活できるのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかしコラーゲンを胸部分に塗っても、それが浸透してクーパー靭帯に成り代わることはありません。コラーゲンの分子は肌の分子よりも大きいものですし、そもそも一般に販売されている肌ケア用のコラーゲンは「医薬品」ではないため、角質層より下に入り込んでいくことはありません。
経口摂取で取り入れた場合も分解されてしまうため、直接的にクーパー靭帯に働きかけることはできないと考えるのが妥当です。

現在美容外科では、「バストの下垂を直すための手術」がよく行われています。
これは乳房を釣り上げるなどしてバストのかたちを直していくものです。また、バストにシリコンバッグなどを入れて胸のかたちを整えるやり方がとられる場合もあります。しかしこれも「クーパー靭帯を修復して、それによって胸のかたちを変える手術」ではありません。

損傷を予防することが何よりも大切

このように、クリニックの力をもってしても、クーパー靭帯を「修復」することはできないのです。このため、クーパー靭帯を損傷させないように予防策を講じることが重要になってきます。

もっとも簡単で、そして有効な方法は、上で挙げた「自分に合ったブラジャーの着用」です。サイズを測り直して昼用のブラジャーを選びましょう。また、ナイトブラやスポーツブラなども、状況に応じて使い分けていくようにします。

加齢や出産による変化を、完全にブロックすることはできません。ただ、「急激なダイエット」は避けることができます。体重を落とす際はある程度長い時間をかけて、少しずつ落としていくようにしてください。

「胸が垂れていくこと」は、だれにでも見られる変化です。また、垂れた胸が悪いというものでもありません。しかし「老けた印象のバストになるのが嫌だ」「いつまでも若々しいバストを保っていたい」と考えるのであれば、クーパー靭帯の保護に努めるべきだといえます。