母乳を作り出す「乳腺」、その発達について

母乳を作り出す「乳腺」、その発達について

「乳腺」は、子どもを育てていくために使われる器官です。

この器官がどのように発達していくのかを、年齢や環境の変化、性差などに照らし合わせて解説していきます。

乳腺は、男女ともに備わっているもの

「乳腺」は、子どもに母乳を与えるために使われる器官です。そのため、女性の性の特徴を持つ人(以下では、特段の事情がない限りはこれを「女性」とします)のバストの中にあり、そしてその中で成長していくことになります。

しかしながら、実は乳腺は男性の性の特徴を持つ人(以下では、特段の事情がない限りはこれを「男性」とします)のバストの中にもあります。

胎児の段階から乳腺は作られており、この世に生を受けた後も、乳腺は男女どちらの体の中にもともに存在する器官なのです。

ただし、男性の乳腺はそれ以上は発達しません。
まれに「女性化乳房(症)」といわれる症状が起きる場合があり、このときには胸がふくらむこともありますが、このような症状が起きる可能性はそれほど高くありません。特に成人の場合はなおさらです。
乳幼児や思春期の男児の場合にはそれでも比較的よく見られるものですが、成人になってから女性化乳房症に悩まされる人の割合はわずか0.03パーセントにすぎないといわれています。

女性の場合は、乳腺のふくらみが10歳~12歳程度の時期からみられるとされています。初潮の前後4年間で胸はよく発達します。この「10歳~12歳」は初潮が起きるくらいの年齢です。初潮が起きる1年ほど前から胸は徐々に発達し始め、初潮後3年程度を経て徐々に成熟していきます。11歳を初潮とした場合、10歳~14歳くらいまでの間に胸が大きくなっていくということです。

ただしこの数字は、あくまで目安です。女児の体を「女性」に近づけていくために使われる女性ホルモン・エストロゲンは、14・15歳以降もよく分泌されます。エストロゲンの分泌量が一番多いのは30歳くらい(諸説はあります)とされていますし、そもそも初潮を迎える年齢もまた個人差があるものです。そのため、実際には15歳以上でもバストが育つ人も見受けられます。

ただ、「非常に早い段階(7歳半よりも前)から、胸が出てきた」「18歳になってもまだ初潮が来ない」という場合は、病気が疑われることがあります。前者の場合は思春期早発症と呼ばれるものです。これは女性ホルモンが早くに出過ぎたことによって起こるものです。放置しておくと身長の成長が途中で止まってしまうなどのリスクがあります。

後者の場合も心配なものです。このような状態にある場合は、ホルモンの働きを抑制するための薬を使ったり、逆にホルモン剤や漢方薬を使って対処していったりする選択肢が選ばれる場合もあります。

なお、ここでは主に女児・女性の乳腺の発達について取り上げていますが、男児もまた男性に近づいていくための体の変化が起き始めます。男児の場合は原則として乳腺の発達はみませんが、声が低くなったりひげが生え始めたりします。子どものころは女児も男児もそれほど変わりありませんでしたが、この「第二次性徴」によって男性は男児らしい筋肉質の体に、女児は女性らしい丸みを帯びた体へと変化していくわけです。

ちなみに、男児にも「思春期早発症」が見られる場合があります。女児の場合は胸のふくらみや体毛、生理の開始時期を見て判断しますが、男児の場合は生殖器の発育や体毛の芽生え、そして声変わりなどによって判断されることになります。

女性の乳房の成長と妊娠について

発達を続けた乳腺は、15歳くらい程度で大人の乳房とほぼ同じようなかたちをとることになります。
しかし乳腺の完全な発育には、「妊娠~出産」を挟まなければならないとされています。

乳腺は、枝分かれした「乳管」と、袋状になって存在する「腺細胞」に分けられています。そしてその腺細胞がより集まって小葉となり、そしてその小葉がまとまって乳管を作ることになります。
子どもを産み育てるために使われる器官であるため、ここは妊娠によって大きく成長することになります。このため、「妊娠~出産を経なければ、乳腺は『完全な成長』には至らない」と考える向きもあります。

妊娠をしている段階では、母乳を滞りなく子どもに与えることができるように体が変化していきます。母乳分泌組織の数も増え、子どもにより効率よく食べ物(母乳)が与えられるようにと変化していくわけです。母乳分泌組織の数が増えることにより、バストサイズも当然変化することになります。マイナビウーマンが126名の女性を対象としてとったアンケートでは、「2カップ上昇した」と答えた人がもっとも多く、48パーセントを占めていました。次に多いのが「1カップ」で39.7パーセントですが、4カップ以上アップした人も2.7パーセントいました。

ただ、妊娠をしている最中というのはまだ母乳は出ません。乳腺の発達を促すプロラクチンというホルモンは出ているのですが、プロゲステロンというホルモンも出ているからです。プロゲステロンは母乳が乳頭から出ることを抑制する働きを持つため、この段階ではまだ母乳は出ないわけです。

出産後は、このプロゲステロンの効果が弱まることになります。その代わり、「オキシトシン」がよく出るようになります。オキシトシンは、「幸福ホルモン」「愛情ホルモン」などのように呼ばれることがあるものです。これは心を安定させてくれる効果を持つホルモンなのですが、同時に、母乳をよく出させるためのホルモンでもあります。このオキシトシンの作用を受け手、乳管から乳児に対して母乳を供給できるようになります。

母乳は、子どもにとって必要なくなったと判断された段階から分泌量も減っていきます。その後に再度妊娠することによってまた母乳が出るようになるのが一般的ですが、閉経(閉経の平均年齢は50歳)を迎えると、乳腺もまたその役割を終えることになります。乳腺はやがて小さくなり、脂肪へと変化していきます。
なお、マンモグラフィーなどで乳がんの検査を行うことができますが、若い人の場合は乳腺が邪魔をしてなかなかがん細胞を見つけることができません。対して、脂肪に変わった後にマンモグラフィー検査を受けた場合はがんがみつけやすくなると言われています。

Excite.ニュース(マイナビウーマン)「妊娠したらバストサイズは何カップ上がった? 「2カップUP」が○%も!」
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母乳と関わりの深い病気~乳腺炎

このように変化していく乳腺ですが、これは「いつも健康的な状態」でいられるわけではありません。ときに痛みをもたらしたり、ときにしこりができたりと、あまり望ましくない方向に変化することがあります。ただ、「生理前に一時的に痛みが出る」など場合はほとんど心配する必要はありませんし、乳腺にできるしこりのうちの80~90パーセントは良性だといわれています。

乳腺に関わる病気や症状は数多くあります。しかしこの記事は「母乳」に注目している記事であるため、それと特に関わりの深い「乳腺炎」について取り上げていきます。

乳腺炎を患った場合、バスト部分にしこりなどができます。また、皮ふが赤くなって痛みや熱っぽさが出てくることもあります。乳腺炎の恐ろしいところは、その変化が「バスト部分だけ」に留まらないことです。場合によっては熱が出てきたり関節痛が起きたり、頭痛が起きたりする場合があります。

乳腺炎は、大きく分けて、「急性うっ滞乳腺炎」と「急性化膿性乳腺炎」に分けられます。前者はなんらかの事情により母乳が乳腺の中に留まり続けることによって起こるものであり、後者は細菌が入り込んで起こるものです。ただし、急性うっ滞乳腺炎と急性化膿性乳腺炎は明確に分類分けされるものではありません。急性うっ滞乳腺炎を放置しておくと、急性化膿性に至ることもあります。

急性うっ滞乳腺炎の場合、バストをもむことによって症状が改善することがあります。また、授乳を行ったり搾乳器を使ったりすることで、乳腺のつまりが改善できることもあります。

さまざまな理由で母乳が出ない場合の考え方

乳腺から出る母乳は、乳児に栄養を与えることができるものです。また、それだけではなく、母乳は子どもの免疫力を向上させる効果があるといわれています。このような高い効果は母乳が持つ特徴でもあります。

ただ、さまざまな理由で、母乳が出ない場合もあります。
乳腺は妊娠~出産を経て完成していきますが、それでも個人差があるものです。出産が終わったとでも未発達の状態で母乳がうまくでないこともあります。
加えて、まだ乳管が開口していなかったり、ストレスがたまったりしていることで乳腺から母乳が分泌されないこともあります。

このような悩みは、バストマッサージをしたりストレスを解消したりすることで改善する場合もあります。ただ、いずれの場合でも早めに病院に行って状態を把握することが重要です。

また、たしかに母乳の効能はすばらしいものですが、現在は便利な人工乳も出ています。どうしても出ない人や、出ないことが過度のストレスになっている人はこの人工乳を使って育てていくことも考慮に入れるべきでしょう。
なお、しばしば、「母乳で育てることは、母子のコミュニケーションをとることである」という意見を目にします。これはたしかにある一面では正しいのですが、「人工乳を使って育てた場合はコミュニケーションがまったくとれなくなる」と考えるのは間違っています。

また、何よりも、「母乳でなければならない」とかたくなに考えてしまった場合、それがストレスを招き、さらに母乳の出を悪くする可能性もあります。

まずは医師に相談をし、その後でベストの解決策を考えていきましょう。